2009 |
08,22 |
«こんな»
この夏の私のべいえい的なero成分とシリアス成分と独立成分の不足を、補うべく…くっ
ええと、今は酒が入っているので、お返事は明日(今日の夜?)させてくださいませ!^^
――引きつれた悲鳴が途切れ途切れに響く。
「ア、ァ……ッ」
声とも呼べないような意味のない母音のみが零れる喉は合間にヒュウヒュウと辛そうな空気を漏らすばかりで誰に拾われることもなく熱とともに宙へ溶けていく。熱をぶつけるだけの行為はおよそまともなものではない。発散すべき熱感情は欲にまみれた行為とは正反対のベクトルにある。まるで発情期の獣みたいだ。でも傷つけあうだけで何も生み出さないし、消せない。どころか腹の奥に何を吐き出しても孕むものもない。ただ、膿んで、擦り切れて、汚れていくだけだ。
こんなことをしても意味なんてない。わざわざ誰に言われなくともそんなことは自身が一番理解している。止めなければ。こんなことをしても、彼にはもう何一つ届かないのだ。分かっているのに、心には冷たく絶望が纏わりついているのに、穿つ腰の動きも押さえ付ける指先に込める力も彼に無理を強いる体を止めることができない。
ぐち、ぐち、と濡れた水音に遮られながら、冷えた床板と自分の腕の間に囚われた彼が低く呻く。噛み締めた唇は端から殺しきれない甘ったるい嬌声を零す。でも唇が名を呼んではくれることはない。不自然だった。あまりに不自然な真似だったけれど、嘘が下手くそな彼は上手くそれを隠せない。こんな時まで彼は俺に正直で、だから尚更突き放されているのだと知る羽目になる。
――与えてやる。
体だけ、それだけなら幾らでも好きにすればいい。代わりに他には何もやらない。お前には、どうせもう必要ないのだろう、と。
これ以上ない程の拒絶はまるで絶望と変わりない。なのに愛していると腕だけはまだ抱き締めて。知らなかった顔ばかりを見せつけて君は笑うのだ。ひどい。君はひどい人だねイギリス。
(……どうして)
届けたかったのは、多分こんなものではなかった。もっと綺麗で、純粋で。ただそれだけのものだった筈なのに、単純で簡単だった言葉が言えない。今の自分には、それを口にすることは許されない。きっと世界で誰より難しい。
「イギ、リス」
「っは、ァ、あッ…ア!」
無残に破かれた服の下、隠していた傷とともに外気に晒された肩を床に押しつけて。大きく足を開かせて、別にセックスのためにあるわけじゃない器官に受け入れることを強いて、尻の穴なんかに熱を突き刺して惨い無体をする。なのに慣れているとも思えない硬い体の中で自分を包む肉は目眩がするほどに熱くて柔らかい。体は素直に気持ちいいと思うのに、反して冷えきった感情がひどく恐ろしくて堪らなかった。
「ゃ、あ!っふ、ぅ…ッ」
「……ッ」
「ひ、ぃう、あー…ッ」
自然に濡れるわけもない粘膜を熱の塊で蹂躙し狭い腹の中で青臭い精を吐き出す。ジュブジュブと鳴る淫猥な水音に頭の中が靄のかかるように白く濁っていく。掬い上げられては落とされる感覚と指先まで支配する熱の容量に翻弄されながら、願うものは別にある。イギリスが欲しい、そう願ったのは確かだ。でもこんなんじゃない。抱き潰すみたいに勝手な熱を叩き付ける、そんな愛し方をしたかったんじゃない。胸が痛い。痛い、痛い、痛い。
「イギリス…ッ」
「ゃ、め…っ…」
嫌だと言ったらどうするの。だめだと言ったら、そうすれば。ぐるぐると埒もない考えが星みたいに明滅する。
(名前を読んで)
ねえイギリス、胸が痛いよ。今にも千切れて死んでしまいそうだ。だって俺は君の望む愛にはなれなかった。なることもできたのに、結局最後まで選べなかった。
(――…ごめんね)
君のくれた愛を、こんな風に、踏み付けにして。
俺は君に自分を刻みつけていく。