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2024
11,14

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2008
09,20

«.»

続きに続くような続かないべいえいです^^
オフ原稿の息抜きにべいえいを書いているこの深愚なる。
ところでプーがかわいすぎる件、わたしは、どうすれ、ば……?!!
はあはあするじゃねいか、かわいいじゃねいか、かわいくないけどかわいいよ何だこれ何だこれえええ

 
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 黒い空に煌々と浮かび上がる月は、どこか白々しいまでの輝きを放ち自らの存在を主張する。
 闇に慣れた瞳には眩しいばかりに映るその形は、見れば見るほど見事な真円だ。
 そもそもロンドンの空は、中心地から離れて郊外へ出てしまえば、町中のそれと雰囲気を一変させて――いや、良くも悪くも古式ゆかしいと揶揄される土地そのものの存在感は可笑しいくらいに変わらないのだが――むしろ、朴訥とした緑溢れる光景が広がっている。その分アメリカのそれと違いのんびりとしたこの場所にあっては深夜ともなれば幾らかは星を覗くこともできるけれど、星見をするに足りるかと尋ねればそうでもなく。ポツポツと離れた場所で点々と淡い光を放つそれの名前を教えてくれたのは彼だった。

 あれはシリウス、あれはプロシオン。
 あれはスピカ、あれはリゲル。あれはカストルとポルックス、それからあれは……。

(あれは、ベテルギウス)

 春夏秋冬、訪れるその度にアメリカへ愛を与えてくれた人。アメリカの記憶を彩る星の風景には、そういえばいつもイギリスの姿が在った。それに比べると、一人きり窓から見上げる空はなんと役不足であることか。ぽっかり穴が開いたようなまん丸の月は夏の盛りを過ぎた今時分、澱んだ夏の空気を孕んだそれから済んだものに変わってまさに目を奪われるほど美しくあるけれど、周りの星を消してしまう光だからこそ逆に、どこか孤独にも見える。どこか寂しい。どうして。胸がシンと音を立てて痛くなる。記憶にある光景の中、イギリスが居ないだけで、どうしてこんなに自分は淋しいと思うのか。
(ねえ)
 ふいに思い出す。
 ねえ、イギリス。
 空を指差して幼い声が問いかける。鼓膜のずっと奥で耳鳴りに似た波がざわめく。まだ覚えている。これは、この記憶は、いつの。
(――あそこには、何があるの?)
 今ははるか遠いいつかに彼の人へ尋ねた不思議。
 宇宙というものに対する概念はもとより空に光るものが何であるのかという確信もなければ大地が動いているということも知らず、それ以前、自分がどんな存在であるかをようやっと正しく理解したような昔に、アメリカはイギリスに尋ねた。
 表面に見える影のような陰影があたかも何かを模した作りもののように見えたせいもあっただろう。手を目一杯に伸ばしても高々と抱き上げてもらえても届かない光が不思議に思えて仕方なかったのかもしれない。きらきら、きらり。とかく好奇心の強かった自分にとって、闇に浮かぶ月や星は、いつだって恐怖であると同時に胸が高鳴る未知への期待感、その対象であり続けた。
(あそこに行きたい)
 胸の内、密やかに芽生えた感情は抑えのきかない子どものこと、素直に口に出しては何度かイギリスを困らせた。それをよく覚えている。
(行きたいよ、イギリス)
 その時、彼は何と言ったのか。じいっと大きな月から瞳を離さずに、ふっくらしたまだ幼い指を伸ばし立ち上がろうとして、それから。ああ。
 思い出した。

 ――だめだ。

 伸ばした人差し指をやんわり握りしめた手の中にしまい込んで。起こした膝を腕に包んで、たやすくバランスを崩した体をきゅう、とやさしく抱きしめて。
 ――だめだ、アメリカ。
 焚き火の赤い炎を背に甘く微笑んで、けれど照らされて橙がかったフォレストグリーンに悲しそうな色を滲ませて、その人は。

『……俺は、一緒に行けないぞ?』

 きらきらと月より綺麗な緑色の瞳を細めて、イギリスは、呟いたのだ。
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